連続ドラマゆえ、いったん気になりだしてしまうと後に引く、ということはよくある。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が朝ドラについて指摘する。
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NHK連続テレビ小説『スカーレット』もスタートから1ヶ月半が過ぎ、ヒロイン・喜美子(戸田恵梨香)が信楽の地へと戻ってきました。いよいよ焼き物の絵付け師を目指すという、物語の中心軸をなす重要な場面へ入ったところ。陶芸家になるための修業シーンを、ワクワクしながら待っていました。
ところが、毎朝見ているとある種の苦痛を感じてしまうのです。いったいなぜ? この苦痛の発生源はいったいどこから?
考えてみるに、おそらく「ドタバタ演出」「下ネタ」の多さに原因があるのではないでしょうか。
たった15分の短い間に「うるさい」と何度もつぶやいてしまう日があります。もう少しメインテーマをしっかりと描くことに時間やエネルギーを使ってほしい、と愚痴りたくなる日もあります。
たとえば……44話(11月19日)は冒頭から「ゲロ吐いた」「ゴキブリ」「尻にホクロ」。いくら大阪放送局制作のお笑いノリとはいっても、全国で数千万人が見ている朝8時開始のドラマです。こうしたエピソードのつながりに違和感を抱く人が出てきてもおかしくない。しかも、小学生でもわかる単純な下ネタ。面白がる人もいるかもしれないけれど、そんなの朝から聞きたくない、という人もいるはず。
笑いとは地域風土や生活文化から生まれるもの。東北の笑いと関東の笑い、関西の笑いにはそれぞれ違いがあって当然でしょう。逆から言えば、大阪制作なら関西風のベタな笑いや新喜劇風の笑いがあっていい、ということかもしれません。
ただし、それは物語の中心軸をきちんと抑えしっかりと描いてさえくれていれば、の話です。主人公の内面や葛藤や成長を描くことよりドタバタが目立ってしまうと、うるさいと感じる視聴者が出てくるのも、いたしかたないことかもしれません。