ヤクザは冠婚葬祭など“義理ごと”を大事にするのが特徴。彼らには彼らなりの独特のルールがある。共著『教養としてのヤクザ』(小学館新書)が話題を呼ぶ溝口敦氏と鈴木智彦氏の2人が語り合った。
溝口:彼らは死んだ後もヤクザ社会のルールに縛られます。ヤクザの葬儀は、組にとっては“興行”であって、香典は組のもの、遺族にはほとんど渡しません。
鈴木:ヤクザの看板でやる葬儀は組の行事であって、遺族は遺族で別に葬儀をすればいいという考え方ですからね。ある組長の奥さんが、葬儀の後に「香典がもらえない」って泣いていたこともありました。
溝口:祝儀、不祝儀の包み金を「義理かけ」と言います。知り合いの組の者に何かあれば金を包む。自分に慶弔ごとがあれば、相手もほぼ同額を包み返す。そういうやり取りで暴力団同士の関係が成り立っています。
鈴木:私がある暴力団の葬儀で目撃したのは、同じ組の3人がそれぞれ800万円、計2400万円の香典でした。大きな組織の幹部クラスになると、それぐらいの額を出し合うわけです。
溝口:昔はヤクザの葬式の夜は博奕をやって、葬式を出した組が胴元になって参列者が香典のほかに儲けさせるということもあった。