警察や軍関係の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、ヤクザ業界の意外なLINE(ライン)活用事情を明かす。
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「ラインができて、良くも悪くも情報のやり取りが早くなった」
暴力団にとっても、今やラインは重要なコミュニケーションツールの1つなのだ。
「組ごとに情報網になるようなモノは持っているとは思うが、ライングループなどはない。事件になると、すぐに開示されるからね」
元組長がそう話す最中にも、スマホがブルブルと振動する音が聞こえてくる。セカンドバッグからスマホを無造作に取り出し、ラインをチェックすると、元組長はため息をついた。
「最近は、組や組のやり方に対する不平不満を長々とラインで流してくるやつがけっこういてね。高山氏が出所してきてからは多くなっているな」
恐喝罪で服役していた、六代目山口組の若頭である高山清司氏が出所してから1カ月。次々と改革を実行しているが、若頭の権限を利用した独裁的なやり方に、一部からは不満の声も上がっているらしい。
送られてきたラインのメッセージを読みながら画面をゆっくりスクロールしていくが、元組長の指はなかなか止まらない。長い文章の最後にあったのは「転送」の文字だ。
ラインで送られてきた情報は暴力団関係者の間で転送され続け、あっという間に拡散していく。拡散先は組関係者やその筋の者だけに留まらず、メディアや警察にまで及んでいる。
「つい先日も、神戸本家の寄り合いに大阪府警の人間が来ていたらしいという情報があったばかりだ。不満を持っている誰かが情報を漏らしたんだろうが、自分らの組にとって機密扱いともいえる情報を漏らすなんてどうかしている」
「神戸や名古屋での重要な寄り合いでは、動画撮影を禁止することもあると聞く。地方の組なら決定事項を組に伝えるために、昔は宿泊先に帰ったらまとめ、それをFAXで事務所に流したもんだ。メールも長い文章はガラケーでは無理、パソコン持ち込みなんてない。だからタイムラグがあったんだが、今やリアルタイムだ。一斉にラインで動画が送信されでもしたら危険だ」
今回ばかりは徹底的に犯人探しが行われるのではないかと、元組長は口元を歪めた。
警察の動きを警戒し、神戸や名古屋に関する情報漏えいには目を光らせている。高山氏の出所後、放免祝いが行われたが、当初、その会場にはある店の名前が挙がっていた。だが、すぐに中止情報がラインで流れた。その後も場所は二転三転し、最終的に高山氏が以前所属していた佐々木一家で祝宴が開かれた。
神戸本家で毎年開かれていたハロウィーンも、組事務所が使用制限で使えないため結局中止となったが、近くの護国神社でやるのではという噂が流れ、傘下の組員は裏を取るのが大変だったらしい。
では、どんな情報がラインで共有されているのか。