臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、NHK杯優勝を果たしたフィギュアの羽生結弦選手を分析。
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11月22日から開かれたフィギュアスケートのNHK杯で、またも圧巻の演技で3年ぶり4度目の優勝を果たした羽生結弦選手。フリーの演技では3連続で予定していた4回転ジャンプが2回転になるも、その後の2つのジャンプで高得点が出るよう構成を変えるという驚異的な修正力を見せつけ、2位と50点以上の差をつける“異次元”の滑りで優勝したのだ。
フリーの演技終了直後、ポーズを決めたまま、うんうんと何度も軽くうなずくと、顔を上げてリンクの外に目を向けた。視線の先にいたブライアン・オーサーコーチに向けてか、そちらを見てコクリと頷くと柔らかく微笑んだ。
その表情は、10月に行われたグランプリシリーズ第2戦、スケート・カナダ(カナダ大会)とは違っていた。この時は、フリーで自己最高の212.99点、合計で322.59点を出して2位に59点の差をつけて優勝。演技を終えた氷上では、膝をついたまま大きく強く頷き、顎を上げ、目力の強い誇らしげな表情でガッツポーズを見せていたからだ。
NHK杯のフリー演技は、おそらく羽生選手が心から納得できるものではなかったのだろう。フリーの点数は195.71点、200点には及ばなかった。点数を見るなり羽生選手は、瞬間的に「まぁまぁかな」といったやや渋い表情を見せ、肩をわずかにすくめたが、1位という結果には笑顔になって両手で可愛くガッツポーズをしてみせた。
どちらの大会でも、羽生選手はある2つのモノと戦っていたという。1つはアメリカのネイサン・チェン選手の幻想、もう1つは怪我への不安だ。カナダ大会終了直後のインタビューで羽生選手は、「ネイサン選手の幻想と戦っていた」と話し、ぐっと鼻にシワを寄せ右下に視線を落とした。続けて「ネイサン選手に勝たなきゃ」「ネイサン選手はここまでやってこれるだろうから」と左下に目線を向けた。