「決して容赦するな」「情け容赦は無用」──この物騒な言葉を発した人物は中国の習近平国家主席。対象は香港の学生たちでもチベットの独立運動家でもなく、イスラム教徒のウイグル人たちで、後述のニューヨークタイムズの報道によれば、2014年春に新疆ウイグル自治区を訪れた際に非公式の場で発せられたもの。以来、同自治区では危険分子の嫌疑をかけられたウイグル人の拘束と収容が相次いできた。
米ワシントンに拠点を置き、本来イスラム教徒が多数を占めていた新疆ウイグル自治区の独立を目指す人権団体「東トルキスタン国民覚醒運動」によれば、グーグルアースを使って調査を行なったところ、同自治区内に収容施設や刑務所と見られる施設500か所近くを確認。収監・収容されているウイグル人の総数は100万人以上にも及ぶという(11月13日付AFPBB News)。
東トルキスタン国民覚醒運動による発表を待っていたかのように、2019年11月17日付の米紙ニューヨークタイムズは、新疆ウイグル自治区のウイグル人らへの弾圧をめぐり、400ページ超に上る中国政府の内部文書を入手したと報じた。
これまで強制収容所の存在を否定していた中国政府は一転、希望者に対して過激思想に対抗するための教育と訓練を提供していると説明したが、同月25日、英国のBBCパノラマや英紙ガーディアンなど17の報道機関が参画する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が新たな内部文書を入手したと発表。「中国電報」と命名されたその公文書には収容者の監禁や教化、懲罰の内容が詳細に記録されていた。
「違反行動には厳しい規律と懲罰で対応せよ」「悔い改めと自白を促せ」──収容所の宿舎と教室にはそれぞれ監視カメラが張り巡らされ、収容者は「思想変革、学習と訓練、規律の遵守」について点数が与えられる。そして自分の行動や信条や言葉を変えたと示すことができて初めて解放されるのだと、流出した内部文書には記されている。