今季7勝の鈴木愛(25)と、8月の全英女子オープンを制し、女子ゴルフ界のニューヒロインとなった渋野日向子(21)。賞金女王争いは、いよいよクライマックスを迎える。『エリエールレディスオープン』での逆転優勝の勢いそのままに渋野が最年少賞金女王に輝くか、それとも──ノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。
* * *
最終戦『LPGAツアー選手権リコーカップ」(11月28~12月1日)の開幕を前に、誰よりピリピリした空気を纏っていたのが、賞金女王レースでトップに立つ鈴木だった。25歳の鈴木は、21歳になったばかりの渋野の成長をひしひしと感じているという。
「(初めて同組でまわった3月のPRGRレディスカップの時から)良いゴルフをしていたので、今シーズン、優勝するかもしれないという印象は受けていました。(今季の渋野の活躍は)別に驚きもしなかったですし、こういうふうになるだろうと感じていた部分もあった。日に日に成長しているし、かなり、勢いを感じる選手。残り1%の可能性であっても、1%の可能性で終わらせない運の強さ、引きを持っている。4日間、注意して(ゴルフを)やりたいなと思います」
表情はほんわかしていても、言葉の節々に「負けられない」という第一人者の矜恃がにじみ出ていた。ここまでライバル視するのは、来年の東京五輪でも代表を争う関係にあり、また、前週の『エリエールレディス』(11月21~24日)における直接対決の敗北があるからだろう。
同組で回った最終日。互いにスコアを伸ばしあい、気がつけば優勝争いはふたりに絞られていた。まさかの展開が待っていたのは、17番パー5。渋野のティーショットがビッグドライブとなった一方、鈴木の一打は右の池へ向かい、大きな波紋が広がった。ツーオンを狙った渋野の第2打もあわや池に飛び込む当たりだったが、グリーン左の木の根元付近に止まった。