飲食業界は3年で5割、5年で7割が潰れるとも言われる厳しい業界。客を呼ぶためにはあらゆる努力が要求されるが、いわゆる“枕営業”をしたところ、その妻から慰謝料を請求された場合、どうすれば良いのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
水商売をしています。先日、お客様の奥様から内容証明が送られてきて困惑しています。要はうちの旦那とあなたの浮気が発覚したから、相応の慰謝料を払えというもの。ただ、浮気といっても「枕営業」でしかなく、知人の話によれば、それなら慰謝料を払わなくてもよいとのことですが、本当でしょうか。
【回答】
その「枕営業」とは“枕”が男女関係の隠語ですから、わかりやすい俗語ですが、普段は使用されることなく、少し古い辞書には、こうした言葉は載っていなかったように思います。デジタル大辞泉では「販売員などが、契約成立の交換条件として顧客と性的関係を結ぶこと」と説明されています。
枕営業は言葉の意味からも、業務遂行の一方法ですから、本来それが問題になるのは枕営業による取引契約の有効性、従業員に枕営業を命じる業務命令の違法性、あるいは枕営業をしている、といわれた場合の名誉毀損です。
ただし、それ以外にも、今回のご相談のように枕営業が不貞行為として問題になったケースもあります。すなわち不貞行為とは、婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益に対する侵害行為と解され、不貞行為者の配偶者は不貞相手方に対して慰謝料の請求ができます。