【著者に訊け】伊藤亜紗氏/『記憶する体』/1800円+税/春秋社
誤解を恐れずに言えば、吃音に迫った話題作『どもる体』等で知られる美学者で東工大准教授・伊藤亜紗氏は、健常者と障害者、なにより自分と他人の体の違いに、興味津々なのだろう。
最新刊『記憶する体』はその違いを中でも決定づけ、〈固有性〉をもたらす記憶に焦点を当てたインタビュー集。第1話「メモをとる全盲の女性」に始まって、四肢切断、麻痺、二分脊椎症、吃音等、障害の程度や種類以前に過去も生き方も当然違う12通りの体の物語を、読者は読むことになる。
すると不思議。本来その人のものでしかないはずの身体感覚が著者の名ガイドもあって肌身に実感され、無意識に動くこちらの体の方が奇妙に思えてくるのだ。そう。私たちはよく知りもしない体を自明のものと捉え、考えることをサボり過ぎていた?
「基本的に体って無意識化されていますよね。何かを食べる時も意識で動く部分なんてほんの一部ですし、そんなほとんど知らない乗り物に乗って平気で生きていること自体、私はいつも凄いなあって思うんです」
ちなみに専門である美学とは?