作品の魅力を大きく左右するのが主演の脇を固める役者たちの存在だ。このクール、注目度ナンバーワンの日曜劇場の場合はどうか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
* * *
木村拓哉主演のTBS日曜劇場『グランメゾン東京』(午後9時)が、好評を博しています。視聴率も6話までの平均値が12.6%。秋に始まったドラマの中で頭一つ抜け出る勢いを見せている、と言っていいでしょう。
このドラマは、パリで評判をとった天才シェフ・尾花夏樹(木村拓哉)の物語。使ってはいけないナッツオイルが混入し要人客が重篤なアレルギー症状をひき起こしてしまった失態でレストランは閉店。尾花は失意のどん底にいたが、女性シェフ・早見倫子(鈴木京香)と出会いもう一度奮起し、「グランメゾン東京」でリベンジを決意する。
やはり見所は、キムタク演じる尾花夏樹の「求心力」にあるでしょう。パリ時代の仲間だった京野陸太郎(沢村一樹)、相沢瓶人(及川光博)と一人また一人、尾花のもとへ戻ってきて改めて最強のチームを形成。そして三つ星レストランを目指す波乱含みの成長プロセスが描き出されていきます。
今回のキムタクは、ご本人自身にもまた、リベンジの意欲があったのではないでしょうか。SMAP解散の元凶と言われたり、「何をやってもキムタク」と演技についてもさんざん言われてきた。ここで反転攻勢をかけようと集中力を発揮するのは自然なこと。
キムタク節と言われてきた軽いセリフ回しは影を潜め、手と体を使って正面から勝負する職人シェフ・尾花になりきっています。尾花はむしろコミュニケーションが不器用。軽口を封印するどころか直接的な表現が激し過ぎて相手との間に対立や摩擦を生む。しかし同時に、尾花の無骨さ、純粋さ、荒々しさがエネルギーとなって多くの人が引き寄せられていく。やはり、このドラマはキムタクの求心力が源になっていて、その周囲に人々が円陣を組むという構図です。
しかし、私は円陣の外にいるもう一人の存在が気になります。何よりも、尾花のもとに「安易には近づかない」距離を保っている人。そう、かつて尾花の弟子だった若手料理人・平古祥平(玉森裕太)です。