歳を重ねるごとに、飲む薬の量が増えていく。「高血圧」「高脂血症」「糖尿病」などの生活習慣病の治療のためには、長期間薬を飲み続けなければならないケースがほとんどだからだ。裏を返せば、それだけ「副作用」のリスクが増えることを意味する。「薬を飲んだ後の死亡事例」が多数報告されている──。
◆副作用が増える
高血圧の治療のために降圧剤「オルメテック」を服用していた50代の男性が服用開始の37日後に「劇症肝炎」を発症。医師は投与を中止したものの、その後、帰らぬ人となってしまった──。
一般的に、高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病の治療に用いられる薬は、重篤な副作用は起こりにくいとされている。だが、専門家は“落とし穴”があると警鐘を鳴らす。ナビタスクリニック川崎の内科医・谷本哲也医師がこう話す。
「薬に『副作用ゼロ』はありえません。仮に飲み始めに副作用が出なかったとしても、体調の変化によって薬の効き方が変わってきた際に副作用が現われることがある。
また、他の病気が重なって飲み続ける薬の種類が増えることで、体に思わぬ影響が出るケースもあるのです」
薬による副作用が疑われる症例に関する情報は、厚労省が所管するPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のホームページで公開されている。冒頭で紹介した事例は、そのひとつだ。
今回、高血圧、高脂血症、糖尿病の治療薬のなかで、60歳以上の処方量上位(厚労省「第4回NBDオープンデータ 内服薬 外来(院外)」)の薬の死亡例を調査した。表は、専門家の協力のもと、PMDAが公表する副作用による死亡の疑いがあるケースを抽出して掲載したものだ。降圧剤で6種類11事例、高脂血症治療薬で3種9事例、糖尿病治療薬で9種24事例ある。