映画、ドラマ、舞台で繰り返し上演される時代劇は多いが、その1つが『里見八犬伝』だ。この『里見八犬伝』、これまで多くの有名俳優を輩出してきた。その最新作の魅力と、過去の意外な出演者についてコラムニストで時代劇研究家のペリー荻野さんが解説する。
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明治座で東京凱旋公演中の舞台『里見八犬伝』(12月8日まで)。「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」八つの不思議な光る玉を持つ八犬士が、この世を闇で支配しようとする悪霊集団と熾烈な戦いを繰り広げるというスペクタクルな物語。原作は約200年前に滝沢馬琴が執筆した長編小説『南総里見八犬伝』だ。
なんと江戸時代、馬琴先生が執筆している最中にすでに歌舞伎になったという人気シリーズ。これまでも数多くの映画、ドラマ、舞台作品になってきた。今回の作品では、主役の犬塚信乃を佐野勇人、仲間となる八犬士が犬川荘助(松田凌)、犬田小文吾(岐洲匠)、犬江親兵衛(神尾楓珠)、犬坂毛野(塩野瑛久)、犬村大角(上田堪大)、犬飼現八(結木滉星)、犬山道節(財木琢磨)という顔ぶれ。原作者もワンコ名前八人考えるだけでも大変だったに違いない。
ペリーは70年代にNHKで放送された人形劇『新八犬伝』でこのストーリーを知ったが、こども心に「毛野って…」と名前だけですっかりケノファンになってしまった。ちなみに毛野は、美貌の女芸人なので女装して登場。塩野も魅惑のメイクで現れる。毛野だけじゃない。レッドやブルーと明確な色分けはしていないものの、八人は「仁」「義」と持つ玉の意味に合わせて個性がはっきりしている。また、敵は全員悪霊とはいえ、頂点に女親玉の玉梓(白羽ゆり)がいて、その下に武将幹部ふたり、そして戦闘員と組織ができている。世界を守るために若者が悪の組織に立ち向かうというこの展開。これはまさに200年前に生まれた戦隊ヒーローだ。