健康のために肉を控えて、野菜を多く食べている人は多いだろう。農林水産省「食生活の実態・意識調査アンケート」によれば、日本人約1500人に「今の食事にもっと取り入れたいもの」を尋ねたところ、最も回答が多かったのは「野菜」の58.8%。逆に、「肉」を取り入れたいと答えた人は13.2%と、最も少なかった。
だが今年9月4日、英国の医学誌『BMJ』に、その常識を覆す研究結果が掲載された。
同研究では、英オックスフォード大の研究チームが、英国の成人男女4万8188人を「肉食群」、肉や魚を食べない「菜食群」などに分類し、「虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)」および「脳卒中(脳梗塞、脳出血)」の発症との関連を、18年以上にわたり追跡調査した。
その結果、菜食群の脳出血の発症リスクが肉食群より43%増加した。またすべての脳卒中でも菜食群の発症リスクが20%上昇した。
野菜を多く食べたグループのほうが脳卒中のリスクが増加したのである。新潟大学医学部名誉教授の岡田正彦医師が解説する。
「この結果が示唆するのは、『動物性のたんぱく質を一切摂取しないと、脳卒中リスクが上がる恐れがある』ということです。同研究では、野菜と魚は食べるが肉は控えた『魚食群』の脳卒中リスクも分析しており、彼らの脳卒中リスクは上昇しなかった。肉や魚などの動物性たんぱく質の摂取量を極端に減らす食生活は避けたほうが賢明です」
米南カリフォルニア大学長寿研究所のヴァルター・ロンゴ教授らが2014年に発表した研究でも、たんぱく質(肉)の摂取に関する興味深い結果が示された。