糖尿病の治療薬には「インスリン(血糖値を下げるホルモン)を出しやすくする薬」や「糖の吸収や排泄を調節する薬」などがあるほか、それらを組み合わせた「配合薬」がある。いずれも血糖値の上昇を抑える効果があるが、「そのすべてに血中の糖分が少なくなりすぎる低血糖のリスクがある」と銀座薬局の薬剤師・長澤育弘氏はいう。
糖尿病薬のなかで最も処方量が多い「メトグルコ」の服用後の死亡例では、いずれも「乳酸アシドーシス」を発症していた。
「低血糖になると、体内では脂肪を糖に変換して不足分を補う『糖新生』が起きますが、この薬はそれを抑制して血糖値を下げます。その際に『乳酸』が生じてしまう。これが原因で血液が酸性になり、心機能障害や致死性不整脈などを起こし、死に至るのです」(長澤氏)
「トラゼンタ」「アマリール」の症例では、「低血糖」が死因となっているものがあった。
「脳は糖分でしか動かないので、低血糖になって脳を動かすエネルギーがなくなると命を落とすリスクがある。脳だけでなく、呼吸や心臓の拍動といった自律運動を司る延髄も糖分でしか動かないので、糖新生が追いつかず重篤な低血糖になると最終的には呼吸停止に陥ります」(長澤氏)
糖尿病薬の副作用が疑われる症例のなかでも、長澤氏が驚いたのは「ジャヌビア」によるものだという。
「『ジャヌビア』は小腸のホルモンに作用する薬なので、何らかの原因で腸管が痙攣して詰まり亡くなった可能性が考えられます。しかし、そもそもジャヌビアは副作用の発症頻度が少ないことが知られている。どのようなタイプであっても処方、服用には注意が必要だと改めて実感させられます」(長澤氏)