アフガニスタンや日本だけでなく、世界中からその死を悼む声があがっている。12月4日、アフガンで人道支援に取り組んできた日本人医師の中村哲氏(73)が現地を移動中に銃撃され、死亡した。同国で長期にわたり取材活動を続けた報道カメラマンの横田徹氏も、中村医師の活動を間近で見続けた一人だ。横田氏が思いを綴る。
* * *
突然の訃報に驚きを禁じ得ない。長い戦乱が続くアフガニスタンで現地住民のために農業支援や医療支援を行うNGO「ペシャワール会」の現地代表・中村哲医師が殺害された。
報道によると、中村医師は2002年頃から活動拠点にしていたアフガン東部のジャララバードを車で移動中、自動小銃を持った男らに襲撃され、同乗していた運転手や警備員ら5人とともに殺害されたという。
犯行の手口をみると、中村医師の襲撃は用意周到に計画されたものだったことがわかる。犯人らはその時刻にその場所を中村医師が通ることがわかったうえで待ち伏せし、警備員に反撃する間も与えないほどのスピードで襲撃した。身代金目的の誘拐などではなく、初めから中村医師を殺す目的だったのだ。
私自身、中村医師と直接の面識はないが、かつてペシャワール会の日本人スタッフを取材した経験があり、その理念や活動ぶりに深い感銘を受けていた。
◆砂漠を緑の大地に変えた
中村医師が何よりも大事に考えていたのは、現地の生活習慣や伝統文化を理解したうえでアフガン国民と接することだった。治安回復や復興支援のため、米軍を始め世界中から様々なNGOがアフガンにやってきて活動しているが、その多くは欧米流の価値観や効率的な方法を押し付けてしまうため、活動が現地で受け入れられることは難しい。