今年の流行語大賞に選ばれた「ONE TEAM」。ラグビー日本代表チームが掲げたONE TEAMの精神は、ワールドカップベスト8という輝かしい成績となって見事に結実したが、いざビジネスの現場では、「上司がやたらとONE TEAMという言葉で社員を鼓舞して鬱陶しい」「仕事はチームワークだけではうまくいかない」など、決して好意的な言葉とは捉えられていない。組織論に詳しい同志社大学政策学部教授の太田肇氏が、ONE TEAMという言葉だけが独り歩きする危険性について提言する。
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ラグビーのワールドカップで念願のベスト8入りを果たした日本代表チームが掲げたフレーズ、「ONE TEAM」が今年の流行語大賞に選ばれた。多国籍で所属も違う選手たちが一つになってプレーし、日本中を熱狂させたのだから大賞に選出されたのは当然だろう。
ところが、さっそく巷ではそれに便乗する人たちが現れだした。会社では「ONE TEAMになって残業しよう」とか、「ONE TEAMだから飲み会には全員参加しよう」とか言われるようになったとの声をあちこちから聞く。
これまでも、社員一丸となったチームワークの必要性を掲げてきた経営者や管理職は多いが、今後は流行語に便乗して、ますます部下にONE TEAMを強いる上司も増えるだろう。トップがONE TEAMと連呼すれば部長、課長も「右にならえ」で会社全体が一色になる。会社のために己を捨てて一丸となれ、という空気が広がりはしないか。
言葉は独り歩きするものであり、使い方によってはまったく逆の意味をもつようになるのだ。