買い物客で賑わう商店街に銃声が響き渡る──日本中を震撼させた兵庫県尼崎市での神戸山口組幹部銃殺事件は3つの山口組抗争が「市民を巻き込むことも厭わぬ本格抗争」に移行したことを示した。
暴力団抗争はきっかけになる暴力事件とその報復が行なわれて初めて、警察から抗争と認定される。復讐劇は殺害の連鎖を呼び起こし、恐怖に負け、殺し合いのチキンレースから降りれば敗者になる。
次にどこで銃声が鳴るかは、すでに発生した殺人事件に“報復”が行なわれたか否かを考えるのがセオリーだ。殺られたら殺り返す。それが暴力団抗争の絶対的な法則である。
もちろん攻守に順番はなく、可能なら攻撃を続けてもいい。が、いまが神戸山口組の“攻撃ターン”である事実は動かない。幹部を殺されたのだから、当然、山口組の幹部クラスの命を奪わなければ“血のバランスシート”に見合わない。ただし、それなりのクラスは用心・警戒しているため、そう簡単には狙えない。加えて経済的・人的犠牲が必要になる。殺しのカードは無尽蔵に切れない。
ではどの地域に暴発の懸念があるのか。
山口組の分裂抗争での最初の犠牲者は、2015年10月、長野県飯田市にある温泉施設の駐車場で射殺された。殺害されたのは六代目側から神戸山口組の中核組織・山健組の傘下組織である竹内組に移籍しようとした組員で、神戸山口組側はまだ自陣営の者ではないと判断して、報復を見送った。