警察や軍関係の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、沢尻エリカ逮捕でも注目を浴びる、通称「組対」という組織の活動内容について解き明かす。
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麻薬取締法違反の罪で起訴された女優の沢尻エリカ被告が、保釈金500万円で12月6日に保釈された。彼女を逮捕したのは「警視庁組織犯罪対策5課(組対5課)」だ。
違法薬物と聞くと、まず“マトリ”と呼ばれる「厚労省地方厚生局麻薬取締部」を思い浮かべるかもしれない。3月に逮捕されたピエール瀧、5月に検挙された田口淳之介、11月に逮捕された国母和宏もすべて挙げたのはマトリ。組対5課も過去には2016年2月に清原和博、2014年5月にはASKAを逮捕しているが、このところ有名人を続けて挙げて名を上げているマトリと比べると影が薄い。
では、組対とは、そもそもどのような組織なのか?
組織犯罪対策部、通称“組対”が警視庁本庁に設置されたのは2003年(平成15年)4月。暴力団や凶悪化する中国人マフィアらによる組織的な犯罪、外国人による麻薬密売、窃盗団などの犯罪の増加に、情報を一本化して総合的な対策を採るために設置された。同時に、手口が巧妙でわかりにくくなってきた暴力団犯罪を捜査、摘発する目的で作られた部でもある。
「準備するまでが大変でした。外国人犯罪と暴力団などによる組織犯罪、銃や薬物対策までを1つの部で捜査するのですから」
当時、組対の設置に携わった警視正はそう話す。
組対は課ごとに分かれ、1課は外国人犯罪の中でも入国管理局と共に動くことも多く、不法滞在や密入国など入管法違反の捜査や地下銀行などの犯罪を、2課は外国人による凶悪事件や殺人事件を扱う。3課は暴力団対策法に関する事案や総会屋対策、4課は暴力団対策で“マル暴”と呼ばれてきた課であり、5課が銃器や薬物対策を行う。他にマネーロンダリング対策を行う総務課や組織犯罪対策特別捜査隊がある。
「外国人と暴力団とでは取り締まるための法律も異なれば、捜査手法もまるで違います」
それだけではない。そもそも課ごとに属している刑事たちの毛色や雰囲気が違うのだ。例えば1課の刑事はスーツ姿で、どこにでもいるビジネスマン風だが、4課の刑事はその筋の者が好みそうな格好といかつい風貌といった具合だ。話し方も態度も異質。それを1つの部としてまとめるには様々な苦労があったのだろう。
そこを突っ込むと、警視正はこう言葉を濁した。
「皆さん、それぞれ意見をお持ちで…。私はそれを調整するため廊下を行ったり来たりしただけです」
「当時、来日外国人の犯罪は前年比約112%とウナギ登りに増加。組対が設置される前、外国人犯罪を主に扱っていたのは国際捜査課でしたが、殺人や強盗、窃盗は刑事部、薬物や銃器の密輸は生活安全部、密入国は公安部と事案によって担当の課がバラバラだったのです」
「蛇頭(じゃとう)」など中国人による組織的な密航の増加や不法滞在者の増加、それに伴う窃盗や緊縛強盗、クレジットカードの偽造や不正使用など組織的な犯罪が急増。新宿では中国人や外国人による凶悪犯罪の増加と治安の悪化など、外国人犯罪が多様化し複雑化、組織化してきた時期だ。