近年は食事の際に米を抜く「糖質制限」や「減塩」こそが健康長寿に不可欠とされてきた。しかし、そんな定説を覆す研究結果が『NHKスペシャル』で紹介され、議論を呼んでいる。
「糖質こそが人間の活動で最も重要なエネルギー源です。それを制限することは、深刻な病気リスクの高まりを意味します」
そう語ったのは、米シモンズ大学教授のテレサ・ファン博士。ハーバード公衆衛生大学院でも非常勤教授を務める彼女の研究は、11月24日に放送されたNHKスペシャル『食の起源 第1集「ご飯」』で紹介されて大きな反響を呼んだ。
シモンズ大学が13万人の食生活と健康状態を20年以上追跡調査し、普段の食生活で糖質の摂取量が標準的な人(総カロリーの60%が糖質)と、とくに少ない人(総カロリーの35%が糖質)を比べると、後者の死亡率が1.3倍以上に高まった。糖質制限による健康リスクに着目した研究はこれだけにとどまらない。
「研究前は高脂肪食グループが最も短命と予想しましたが、フタを開けると糖質制限のマウスの寿命が最も短くなりました」
こう語るのは、東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授だ。今年5月に日本栄養・食糧学会でこの研究結果を発表した。
都築准教授らがマウスを「一般的な日本人の食事に近い通常食」「アメリカ人の食事に近い高脂肪食」「糖質制限食(総カロリーの20%程度)」の3群に分けて飼育した研究でも、糖質制限食グループは他の食事グループと比べて、8~9週ほど短命だったという。