漫画雑誌を買ってお目当ての作品を読もうとすると「あれ、今週、ない?」──下のほうをよく見てみると「作者取材のため休載します」と小さな字で書いてあることがある。漫画家の「取材」とは、いったい何をしているのか。ある漫画家の「拘置所取材」に同行した経験があるジャーナリストの高橋ユキ氏が、その一端をリポートする。
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登場人物のキャラクターを設定し、舞台を決め、ストーリーを組み立て、コンテにそれを起こし、ペン入れをする……門外漢が想像する“漫画家の仕事”はおおよそ、こんなイメージだろう。そのストーリーを組み立てるまでに、漫画家が行うのが「取材」だ。
ビッグコミックスペリオールに連載中の『夏目アラタの結婚』作者の乃木坂太郎氏は、担当編集者とともに、長い期間を取材に費やしたという。本作では、児童相談所に勤務する主人公・夏目アラタと、東京拘置所に勾留されている女性死刑囚・品川ピエロこと品川真珠との獄中結婚が描かれる。物語の序盤の多くは、東京拘置所の面会室でストーリーが進展していく。重要な場所だ。刑事裁判の傍聴や拘置所での被告人との面会取材を主に行う筆者のもとに、乃木坂氏の担当編集・M氏から連絡があったのは、連載開始から8か月も遡る、昨年8月のことだった。拘置所を取材したいというのである。
青年漫画における取材の重要性について、M氏はこう教えてくれた。
「青年誌はファンタジーじゃない作品が多いので、情報が大事になってきます。ただ作家さんによって色々なタイプがあり、徹底的に取材される方と、あえてしない……というか、しすぎると逆に窮屈になってしまうタイプの方もいらっしゃいます。詳しく知ってしまうことで、これもできない、あれもできない、となる方も。そこは加減なんですね」