古本屋で購入した書籍に「●●大学蔵書」という印鑑が押してあり、ドキリとさせられた体験をした人は少なくなかったが、きっと、大学の先生による大量の蔵書処分に紛れこんでしまったのだろうと善意の解釈をしたものだ。だが最近は、フリマアプリなどで日用品を買ったら「●●役所」とラベルがあって仰天させられる時代だ。こちらは、ついうっかり紛れ込んだとは考えづらい。ライターの森鷹久氏が、役所の廃棄処分品や紛失物が売り買いされている実態についてレポートする。
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神奈川県庁のサーバーに使用されていた複数のハードディスクが、そして品川区の災害備蓄品だった、メーカーが推奨する使用期限をオーバーした紙オムツが、ネットオークションで転売された。廃棄対象だったとはいえ、役所の物品が横流しされたともいえる事件が相次いだ。ハードディスク転売犯は、デジタルメディアのデータ消去を請け負う会社の社員。オムツの転売犯は、調査中ではあるが「仲介の運送業者が関わった可能性が高い」(キー局社会部記者)という。
これらの事件は特殊な例ではない。オークションサイトで売買されているものには、似たような出自の物品が少なくない。捨てられる、処理されるべきだったものが捨てられず、それを違法にカネに変えてしまおうとする人たちがいる。
「フリマアプリで買ったカメラのバッテリーに“××小学校備品”というシールが貼ってあって驚きました。販売者は都内のリサイクル業者。問いただしても、うちは関係ない、知らないと。その小学校に問い合わせ、何度かやりとりしたものの、連絡が途絶えた。そのまま使用していいものかわからず、使っていても気味が悪くて」
埼玉県在住の山浦なおみさん(仮名・30代)が、フリマアプリでデジタルカメラを購入したのは今年6月。子供の試合を撮影しようと、9千円ほどで販売されていたカメラを購入した。見た目は綺麗で、使用する分には何ら不具合もない。しかし、充電のためにバッテリーを取り外したところ、学校名が書かれたステッカーを発見。盗品じゃないか、そう考えた。
「小学校の先生という人と何度か電話で話しました。機種を告げると、確かにうちで使っていたものだ、そして、少し前に紛失したものだと最初は確かに言われたんです。その後すぐ、その小学校の別の先生から電話がかかってきて、処分したものだから問題ない、と説明を受けて釈然としませんでした。盗まれたことを隠蔽しているのではないかと」