NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』の全47回の平均視聴率が関東地区で8.2%、関西地区で7.1%(ビデオリサーチ調べ)となり、大河史上最低となった。視聴率は低迷したものの、評価が低かったわけではなかった。『いだてん』を「名作」と言い切る時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが振り返る。
* * *
『いだてん~東京オリムピック噺』が終わった。宮藤官九郎がタクシードライバー役でひょっこり顔を見せるあたり、いかにもこのドラマらしい最終回だったと思う。
それにしても『いだてん』ほど、「面白い」とコラムを書いたり、コメントを出すたびにさまざまな反応をもらった大河ドラマはなかった。コラムを読んだという方に呼び止められ、「こんなドラマをほめちゃいかん」と20分近く語られたこともある。出演者や視聴率についてもずいぶん騒がれた。
ここでは『いだてん』を名作だと思っている立場から、勝手に反省会をしてみたいと思う。
第一話を見たとき、正直「大変なことになる」と思った。それは従来の大河ドラマファンには容易に受け入れられないだろうと感じたからだ。一話は昭和34年、東京オリンピック開催決定の場面からスタート。それから明治になったり、昭和になったり。まさしく、いだてんのスピード感でドラマが展開する。
主人公の金栗四三(中村勘九郎)や田畑政治(阿部サダヲ)、日本のオリンピック初参加を決めた嘉納治五郎(役所広司)を、よく知らない視聴者も多かったに違いない。過去にも『おんな城主直虎』の直虎(柴咲コウ)や『花燃ゆ』の杉文(井上真央)のように無名の主人公はいたが、それらにはたいてい織田信長、吉田松陰など大河ドラマではおなじみの歴史の大人物が登場する。「今度の信長は誰?どんな風に演じる?」と確認に近い見方もする視聴者も多いのだ。