おそらく今年で最も盛り上がるレースになりそうな第64回有馬記念。予想をぶつけ合うのもまた楽しい時間だ。競馬ライターの東田和美氏は大胆に狙う。
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GⅠ馬11頭中7頭が2019年のGⅠを勝っており、合計22のGⅠを制している。これはジェンティルドンナが勝った14年の10頭26勝と肩を並べる豪華さ。平成以降、有馬記念にGⅠ馬が8頭以上顔を揃えたのは9回。様々な路線を経てきた実績馬による頂上決戦かと思いきや、実は3着までにGⅠ未勝利馬が必ず1頭は入っている。
トウカイテイオーが1年ぶりの出走で勝った1993年は、2着の菊花賞馬ビワハヤヒデ他、JC馬レガシーワールド、天皇賞(春)のライスシャワー、ダービー馬ウィニングチケット、牝馬2冠のベガという豪華メンバーだったが、3着はナイスネイチャ。“ブロンズコレクター”の名にふさわしく、有馬記念3年連続3着という快挙を達成した。
サクラローレルが勝った1996年は14頭中9頭がGⅠ馬、うち8頭は同年の制覇だったにもかかわらず、2着マーベラスサンデー、3着マイネルブリッジ、4着ロイヤルタッチはGⅠ未勝利。その他GⅠ馬が9頭出走した2002年、8頭出走した2008年はともに2、3着がGⅠ未勝利馬だった。
前出の2014年も、宝塚記念でGⅠ5勝目をあげたゴールドシップ、JCで2つ目のGⅠを勝ったエピファネイア、ドバイDFを勝つなど世界1位にランクされたジャスタウェイが上位人気に名を連ねていたが、2着は皐月賞、ダービーでは健闘したものの、前走の菊花賞で16着に大敗していたトゥザワールドだった。
もっとも伏兵馬の食い込みは、有馬記念にはつきもの。30回のうち1番人気は13勝2着7回と強さを見せているが、馬券圏内の3着までが1~5番人気で収まったのは7回。12回は二桁人気馬が絡んでいる。2016、2017年は1~3着をGⅠ馬が独占したが、その前16年間は、必ず非GⅠ馬が馬券圏内に入っている。
藤沢和雄調教師は著書『GⅠの勝ち方』(小学館)で、余力を残すローテーションが必要だと前置きして、2007年のマツリダゴッホ(9番人気)の勝利をこう分析している。《マツリダゴッホは天皇賞で惨敗した。普通は「こんなはずじゃない」とジャパンカップを使いたくなるが、そこを我慢して、得意な中山コースの有馬記念に照準を合わせて調整してきた》。これに対し、1番人気で8着に敗れたメイショウサムソンは、春大阪杯(1着)から天皇賞(1着)、宝塚記念(2着)と使い、凱旋門賞はインフルエンザ騒動で断念。秋は天皇賞(1着)、JC(3着)と走り、《人間が考えるほど余力が残っていなかったのかもしれない》。
また、この年の有馬記念では、牝馬ながらダービー馬となり、JCでも古馬相手に健闘したウオッカが、3番人気11着と大敗している。これについて角居調教師は中山2500mが合わなかったと断言。2008年、2009年もGⅠ勝ちを重ねてファン投票でも1位に選出され、年度代表馬にもなったウオッカだが、角居師は有馬記念を使わなかった。
一方、GⅠ未勝利ながら、2006年2着、2007年5着だった《ポップロックのような器用な馬には有馬は合う》《適性だな、と思います》(小学館新書『競馬感性の法則』)と指摘している。東西を代表する二人の調教師が、有馬記念では「格」よりも「状態」や「適性」がカギになることがあると言っている。