年末年始にかけて、忘年会や初詣などで人混みに出かける機会が多くなる。そんなときに気をつけたいのが、「感染症のリスク」だ。この時期に感染する恐れのあるウイルスや細菌は何があるのか。
まずはインフルエンザ。国立感染症研究所によると、今年は例年より流行が数週間早く、12月15日までの一週間に発生した全国のインフルエンザ患者数は推計で53万5000人に達している。
元小樽市保健所所長で医療ジャーナリストの外岡立人氏は、年末年始からのインフルエンザの状況についてこう指摘する。
「今流行っているH1N1型は比較的症状が軽く、高齢者が肺炎を引き起こして亡くなるような事態はほとんど起きないでしょう。一方で、症状が軽いだけに、もう治ったから大丈夫と判断して、あるいはインフルエンザではなくただの風邪だと勘違いして、出歩いてウイルスをばらまいてしまう人が増えると考えられます。買い物や初詣などで出歩く機会の多い年末年始となればなおさらで、感染が一気に広がる可能性が高い。
正月明けから感染者数はさらに増え、学校がはじまるとピークとなりそうです。流行するウイルスがH1N1型からH3N2型に変わってくると、2月初旬まで流行は衰えないかも知れません」
症状が軽いといっても、インフルエンザであることに変わりはない。もしかかれば、おおよそ1週間は自宅療養するのが原則。年末年始の休みの間じゅう、自宅で過ごす羽目になりかねない。
インフルエンザと並んで怖いのがノロウイルス感染症だ。ウイルス性の急性胃腸炎で、発熱や腹痛、激しい下痢・嘔吐(吐き気)などの症状が出る。若い人の場合は数日程度で回復することが多く、死に至るケースはほとんどないが、子供や高齢者では重症化することもあり、病院や福祉施設に入っている高齢者の間で集団感染が起き、死者が出たケースはいくつかある。冬場に流行しやすい感染症だ。
「ノロウイルスは感染力が非常に強いウイルスで、気温が下がると道端でも生き続け、ほんの数十個のウイルスが手に付着しただけで感染することもある。ノロウイルスに感染していながら気づかず、体調が悪いまま宴会に参加してトイレで吐くと、その後、トイレを使った人たちに一気に広がります。道路で吐くと、吐瀉物が乾燥して風で舞い上がり、近くを歩いただけで感染することもある。いったんノロウイルス感染症が流行すると、エレベータの手すりのベルトや電車のつり革からでも感染したりします」(外岡氏)