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【井上章一氏書評】五輪の顕彰形式には味わい深い歴史が

『増補改訂 オリンピック全大会』

 年末年始はゆっくり腰を据えて本を読む絶好の機会。2020年は果たしてどんな年になるのか? 国際日本文化研究センター教授の井上章一氏が選んだ2020年を読み解く1冊は、『増補改訂 オリンピック全大会』だ。

●『増補改訂 オリンピック全大会』/武田薫・著/朝日選書/1800円+税

 いよいよ、オリンピックの年となる。日本人は、どれだけメダルがとれるか。テレビをはじめとするメディアが、そう気をもむ度合いも、ますます高まろう。

 金銀銅の賞牌で、参加者をたたえる。この顕彰形式は、一九世紀初頭にフランスの国内博覧会ではじまった(一八〇一年)。産業立国をめざしたナポレオン体制の産物である。当時の博覧会は、技術コンクールの場であった。ナポレオンは金銀銅の賞牌で、技術者の向上心をあおろうとしたのである。

 二〇世紀前半までの万国博覧会までは、この仕組がたもたれた。ただ、時代が下るにつれて、万博は技術コンクールとしての性格をなくしだす。金銀銅の栄典もこの会場からはなくなった。

 オリンピックがはじまったのは、一九世紀末である。はじめのうちは、それほどもりあがっていない。第二回や第三回のオリンピックは、万博の余興として開催されていた。そして、万博のそえものだったからこそ、金銀銅の褒章もオリンピックへ伝達されたのである。

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