2019年もはや年末。消費税が8%から10%に増税されたのを境に新車販売が大幅減に転じたものの、トヨタ「カローラ」「RAV4」、ダイハツ「タント」「ロッキー」などヒット商品がいくつも登場。また、マツダ「マツダ3」などの話題作もあった。来年2020年は国産勢が久々の新車ラッシュとなる見通しだ。
さて、2019年の自動車マーケットを見回すと、キラリと光るものを持ちながら、販売面で苦戦を強いられた新型モデルがいくつも見受けられた。なぜこんなことになったのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏に、気になる“アンラッキーモデル”5台をセレクトしてもらった。
●クラウン(トヨタ)
2020年1月に生誕65年を迎えるトヨタの伝統的高級サルーンカー「クラウン」。第15世代にあたる現行モデルは2018年6月に発売された。再安グレードでも400万円台後半という高額モデルながらデビュー後1か月で3万台もの受注を集め、ライバルメーカーの顔色を失わせた。
ところが、その受注がはけた後は販売ががっくりと落ちた。今年11月までの販売台数は3万4438台と、登場2年目にして年間4万台を割り込むことは避けられない状況。落ち込みのペースはここ20年で最速だ。
日本の高級セダン市場では圧倒的な販売ナンバーワンではあるし、トヨタの乗用車の源流として存続させたいところであろう。が、ほぼ国内専用モデルのクラウンは、グローバルで数を稼ぐのが難しい。捨てるには惜しく、さりとて存続してもうまみがない──という難しい状況に置かれている。
かつては乗用車上位十傑の常連だったこともあるクラウンの販売が振るわないのは、「アルファード/ヴェルファイア」に代表されるトヨタ、レクサス両ブランドの高級ミニバン、SUVの人気モデルに食われたことが主因と推察される。また、クラウンのようにブランドイメージが強固なモデルは新陳代謝が難しい。若年ユーザーをクラウンに誘導するというのも、それだけで至難の業だ。
憂き目に遭う現行クラウンだが、クルマの出来は悪くない。特に中低速走行時の静粛性の高さと路面の凸凹に対する当たりの柔らかさは格別。安定性も良好で、ロングランになればなるほど良さが光るキャラクターを持っている。
もっとも、日本ではクルマで遠くに遊びに行くというバカンスライフは廃れきっており、それも所詮は宝の持ち腐れなのか!? クルマの出来を考えると頑張ってほしい1台である。