大地震などで被災したペットを救う取り組みとして今、災害派遣獣医療チーム「VMAT」を結成する動きが、全国に広がっている。今回はそんな「VMAT」の活動内容を紹介。不測の事態に見舞われた際、あなたもVMATの力を借りることになるかもしれない。
近年、ペットとの防災に関する意識が高まり、さまざまな取り組みが検討されているが、なかでも、災害時に被災地に駆けつけ、被災したペットの救護に当たるVMATが注目されている。
VMATは、2011年の東日本大震災で多くのペットの救護が遅れたことを教訓に、2013年に福岡県獣医師会が結成した。その後、群馬県、大阪府、沖縄県でも結成され、今後2年以内に、九州地方のほとんどの県でVMATが組織される予定だという。
VMATとは、「Veterinarian Medical Assistance Team」の略称。2016年の熊本地震の際は、福岡VMATから15日間、獣医師や動物看護師など、のべ60人の隊員を派遣。福岡県内の動物病院にペットを預かってもらう手続きをしたり、ペットフードなどの物資輸送も行った。
「隊員は、獣医師や動物看護師、トレーナー、トリマーなどで、いずれも動物救護の専門的な訓練を受けています。大規模災害時や多くの傷病動物が発生した事故などの際、約48時間以内に出動します」
と、動物環境科学研究所所長で、福岡VMAT設立者の獣医師、船津敏弘さんは言う。原則、自治体からの要請に基づいて出動するが、発災直後で自治体が混乱している場合、事前の協定に従って、獣医師会の判断で活動を開始することもあるという。VMATの主な活動内容は、次の通りだ。
●避難所の動物の健康診断やけがの手当てを行う。
●緊急を要する場合は応急処置を施し、動物病院への搬送指示を行う。
●避難所を巡回し、被災者からのペットの健康に関する相談窓口を開設。避難所で過ごす動物のストレス緩和のアドバイスを行う。
避難所にいるから安心とうわけではない。避難所での生活はペットにとってもストレスで、下痢や嘔吐、食欲不振を訴えることも多いという。
●被災地を定期的に巡回し、放浪している被災動物を保護。飼い主の元に返す。
そのほか、動物を飼っていない人たちからの苦情にも対応するという。