日産自動車が2019年11月末、クルマをテーマにしたSFを集めた短編小説集『答え合わせは、未来で。』を「日産未来文庫」として刊行した。SF作家らによる未来のクルマにちなんだ19の電子書籍作品をわずか88円で配信するという新しい試みだ。作家の内藤みか氏が、企業による電子読み物配信の流れを振り返りながら、大変革期のクルマ社会の行く末を展望した。
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ケータイ小説の頃より、企業による電子読み物の試みはいくつも行われてきました。
たとえば、米ファストフアッションブランドのForever21が日本にオープンした2009年には、芥川賞作家の金原ひとみさんによるオンライン連載小説「Forever21」が同社のPCサイトと携帯サイトで配信されました。
また、私自身も2005年にオンワード樫山のブランドROSE BUDのケータイサイトにてケータイ小説を連載していたのです。
そうした流れはスマートフォンが流行してからしばらく鳴りを潜めていました。ケータイサイトは外部サイトへのリンクがあまり貼られず、読者を囲い込むために読み物ページを置いておくと効果があったのですが、スマートフォンサイトは目的のページを読むとすぐに他のサイトに移動する人が多く、オリジナルの読み物に目を留める人が少ないためです。
しかし今はKindleなどで簡単に電子書籍が配信できる時代となりました。コストも紙の本ほどはかからないため、企業が作家とコラボすることにハードルが低くなったのです。今後はこうしたテーマ性のある電子書籍を企業が独自に配信する流れが増えてくるかもしれません。