何を食べるかはつまりどう生きるか、につながる。オリンピックイヤーの食卓にはどういった変化が見込まれるのか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。
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人間の営みのまわりには、必ず流行りすたりがある。昨年末には2019年の「食」について総括をしたが、2020年の「食」について年頭にあたり、恒例の今年来る「食」を予想しておきたい。まず五輪イヤーとなる2020年の今年、注目が集まるのは「グローカルフード」だ。昨年、大流行した台湾の「タピオカ(ミルクティー)」やコリアンタウン発の「ハットグ」のような海外の流行をそのまま取り入れるだけでなく、海外でもより狭い地域、未知なるエリアで人気だったものが発掘され、紹介されて人気を獲得するはずだ。
すでにその兆しは飲食店の現場でさまざまな形で起きている。日本の名店で研鑽し、キャリアを積んだシェフが、海外の数十か国を巡った後、昨年オープンさせた中国料理店があっという間に予約の取れない名店となり、話題となった。確かな舌と腕で、現地の味を日本に持ち込み、サービスなどを含めてこの国の気風と風土に合わせて微調整したところ、名だたる食通から絶賛を受けることになったのだ。
ジャンルとしての中華も引き続き注目が集まる。近年、埼玉県の西川口にはこれまで中国の奥地でしか食べられなかった現地の郷土料理を食べさせる飲食店が雨後のタケノコのように開店した。背景には風俗店の一斉摘発で空きテナントが大量に発生したこともある。中国の奥地まで足を運び、現地の料理や食文化を紹介するライターもいるし、中華圏の料理を再構築して提供する、四谷・荒木町の料理店も大人気だ。
中国料理だけではない。日本に焦がれたメキシコ人シェフが、生地をトウモロコシから挽く三軒茶屋のタコス店にはファンが引きも切らない。日本在住歴の長いインド人オーナーも銀座のど真ん中にスパイスを中心に据えたフュージョン料理店をオープンさせた。中央アジアのウズベク・キルギスの郷土料理を現地出身のシェフが提供する店のカウンターは在日中央アジア人でパンパンだし、ラオス、ミャンマーなど東南アジアと日本を行ったり来たりするご夫婦が、現地料理を振る舞うサロンも常に予約で満杯だ。