年齢を重ねるほど、生活習慣病などの薬を服用する機会や、その種類が増える。だが、いつも飲んでいるその薬が突然、思わぬかたちで健康を害する瞬間がある。それが「食後」だ。
銀座薬局の薬剤師・長澤育弘氏が指摘する。
「口から入った薬は胃で溶け腸で吸収され、肝臓で分解されて全身に行き渡ります。その際、同じタイミングで体内に入った食べ物や飲み物が影響して薬の作用が強くなったり、弱くなったり、想定外の作用が出たりすることがあります。これらを『相互作用』と呼びます」
医療機関を受診した際に「薬+薬」の危ない組み合わせは注意深くチェックされる一方、「薬+食べ物」や「薬+飲み物」は日常生活に溶け込んでいて、見逃されるケースもある。
では、思わぬリスクを招く薬と食品の「組み合わせ」には何があるか。薬との組み合わせで警戒すべきは、グレープフルーツだ。グレープフルーツはビタミンCが豊富で、風邪の予防や疲労回復に効果があるとされる一方、小腸での代謝機能を阻害して、薬の効果を増強させてしまう。
「降圧剤のカルシウム拮抗薬と一緒に摂取すると、血圧が下がりすぎます。スタチン系の高脂血症剤と併用すると肌がガサガサになったり、副作用の横紋筋融解症が出やすくなります。ED(勃起不全)治療薬で火照り、頭痛、射精障害といった副作用が出ることもあります」(長澤氏)