東京・目白通り沿いに、巨大なガス貯蔵施設に隣接した「練馬水素ステーション」と書かれた真新しい施設が目につく。水素ステーションとは、次世代エコカーの「燃料電池車」(FCV)がガソリン代わりに燃料とする水素を補給する施設である。
2014年に関東初の商用水素ステーションとしてスタートした同所は一般的なガソリンスタンドと比べても広大だが、出入りする車は滅多に見られず、2人の従業員が黙々と落ち葉を掃いているだけだった。
「トヨタやホンダが次世代エコカーとして力を入れるFCVですが、現状は3000台程度となかなか普及していない。ネックとなっているのが、水素ステーションの整備が進んでいないこと。そこでFCVを支援するために、経産省が補助金を出して全国各地に水素ステーションを作っている。2020年度までに全国160か所が目標で、福島県や大分県などにも作られています」(自動車業界関係者)
環境問題を考える上では重要な施策だが、この補助金が、今年開催を控える東京五輪の「関連支出」とされていることには疑問を覚えずにはいられない。
2019年12月4日、国の財政を監視する会計検査院は、東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、2018年度までの6年間に国が支出した関連経費の総額が、約1兆600億円に上ったと明らかにした。大会組織委員会と東京都が見込む事業費と合わせると、関連支出の総額は3兆円を超える見込みだという。
一方、国や大会組織委、東京都は12月20日、大会の総予算は1兆3500億円に収まると発表した。このうち、国の負担は1500億円とされている。1兆600億円と1500億円……なぜこれほどまでの開きが出るのだろうか。