2020年の日本には国論を二分する論争があるが、その一つが日韓外交の路線は「親韓」か「離韓」か? どちらであるべきか──というものだ。本誌・週刊ポストの読者アンケート(※)では【親韓】40.4%、【離韓】59.6%だった。ここでは見解の異なる2人の識者の意見を紹介しよう。
●天木直人氏(元外交官・親韓派)
外交関係は感情を超えて、嫌いでも、国益のためなら、うまく付き合わなくてはならない場合があります。今の安倍外交は単純に「韓国はけしからん」という感情に押し出されている。
いわゆる徴用工問題は、韓国人の補償は日本の支払った資金で、韓国政府の責任で行なうということが日韓請求権協定ではっきり明記されている。そしてこれまでの韓国政府も認めてきた。だから日本は韓国の最高裁が国際法違反の判決を下したと批判するのではなく、文在寅政権に協定順守を迫ればよかっただけだったのです。この一点に絞って攻めれば韓国政府は反論できなかったと思います。
恐らく、2015年の完全かつ不可逆的な慰安婦合意が蒸し返された事が頭にあったのでしょう。怒りに任せて韓国そのものが国際法無視の国と言わんばかりの批判を繰り返しました。
しかも、国際法違反ばかりを繰り返すと、もう一つの問題に跳ね返ってきます。つまり日韓請求権協定が結ばれた1965年当時は、まだ国際社会は人権問題について確固とした共通認識はなかったが、1976年に国際人権規約が発効し、日本も1979年に批准している。この規約により個人の基本的人権は国家の侵害から守られる事になり、欧米主要国はそれぞれの過去の行為を償う政策をとってきたのです。安倍首相がこれ以上国際法違反を大声で繰り返せば、それでは請求権協定を見直そうと韓国世論が騒ぎ出しかねない。
歴史認識については、いやしくも国の指導者は忠実かつ謙虚でなければいけないのです。無責任な嫌韓に惑わされず、いつでも話ができるような「親韓」の姿勢が大切です。