ネットが発達し、通信販売でたいていのものが手に入り、情報も入手できる時代に東京暮らしと地方住まいの差はそれほどないはず……というのは、それらの情報類を上手に使いこなせる人だけ。正月の実家帰省には、地元で暮らす旧友たちの無茶ぶりに応え続ける努力がもれなくついてくるという首都圏で働く人たちのぜいたくかもしれない悩みを、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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「すっかり私“東京の人”になってしまいました。ただ東京に住んで、東京で働いているだけなのに…」
昨年末、東京から中国地方の山間部にある実家に帰った新藤優人さん(仮名・30代)は、今回も地元の幼馴染や先輩、後輩から“東京の人”扱いをされたと訴える。新藤さんは高校卒業と同時に、専門学校へ通うために上京し、そのまま都内のIT系企業に就職した。特段、新藤さんに都会への憧れがあったわけではない。
「エンジニアになりたいという夢があり、その為には大阪か東京の専門学校に行くしかなかったんです。地元や最寄りの大都市である広島や岡山に仕事があれば、実家に帰りたいという気持ちはあるのです。田舎が嫌だ、ということでは全くないのです」(新藤さん)
地元で酒を飲んでいると「お、地元を捨てた奴が帰ってきとる」と先輩にからかわれ、友人からは「東京のモンはやっぱ違うね」と、嫉妬の入り混じったいじられ方をされる。最初は「俺は都会に住んでいるのだ」という優越感がなかったわけではない。ただ、もう十数年もしつこくこう言われ続けると、嫌気もさすし、そろそろ腹も立ってくる。かと思えば…。
「今度ディズニーに行くから自宅に泊めろ、飛行機や新幹線の安いチケットを取りたいとか、無茶振りとしか思えないお願いをされます。自宅はワンルームのアパートだし、ディズニーなんか行ったこともない。青山のどこどこに行ったことはあるか、吉祥寺は?目黒は?浅草は?と観光の事も聞かれますが、オシャレには無縁だし、美味しいレストランだって全く知りません。地元の連中は東京の人はみんなオシャレでグルメだと思っているみたいなんです」(新藤さん)