文部科学省主導の「大学入試改革」が迷走している。英語の民間試験活用は延期され、国語と数学の記述式問題の導入も見送られた。はたして大学入試はどう選考すべきなのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、真に目指すべき改革のあり方を論じる。
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今年の大学入試センター試験は1月18日・19日に実施され、約55万8000人が受験する。来年からは高校教育、大学教育、大学入試の一体的改革(高大接続改革)の一環で「大学入学共通テスト」と名を変えるが、導入予定だった英語の民間試験や国語と数学の記述式問題が延期となり、大学入試改革は振り出しに戻って来年の受験生も現場の教師も大混乱している。
文部科学省は、予見が困難な今の時代の中で新たな価値を創造していく力を育てるためには「学力の3要素」(【1】知識・技能【2】思考力・判断力・表現力【3】主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)を育成・評価することが重要であり、そのためには「高大接続改革」を行なわねばならない、としている。となると、これまでの教育制度や教育システムを抜本的に改革しなければならないが、文科省が実際にやろうとしていることは小手先のマイナーチェンジだけである。
大学入試は一つの「哲学」を持つべきであり、私は3段階で選考すべきだと考えている。
第1段階は、大学入試センター試験ではなく、いわば「高校卒業資格センター試験」だ。これは小学校から高校まで12年間の教育内容をきちんと理解したかどうかを検証する(現在の高等学校卒業程度認定試験とは異なり、卒業資格を与える)もので、英語、国語、地理歴史、数学、理科などの受験科目だけでなく、音楽や美術も含めた全科目で、学習指導要領を司っている文科省が責任を持って全国一斉に行なう。
そして、たとえば合格ボーダーラインを60点に設定し、それを下回った科目は追試で60点に達するまで高校を卒業したとは認めない。試験は年明けの大学入試と間を空け、年末までに実施する。年末までにクリアしなかった生徒は補習を受けることで卒業できるようにする。