このドラマは、昨年、北海道テレビ開局50周年記念作として各地の系列局や独立局で放送されて以来、SNSや配信でも話題を集め、日本民間放送連盟賞グランプリを獲得。ついに地上波で全国放送となった。
物語の舞台は北海道のローカルテレビ局。ここに謎の「バカ枠」として採用された新人の報道局員・雪丸華子(芳根)がズッコケつつ奮闘する姿を描くコメディである。
雪丸のやることはすさまじい。撮ってきたニュース映像にレッサーパンダが二匹映って区別がつかないなんてことは序の口。芝生広場で生放送中のお天気キャスターの後ろで虫取り網を振り回す姿が映り込んだり、放火事件取材ではカメラのバッテリーが終了。デパ地下グルメ紹介番組では勝手に会場に来て試食をしまくる。だが、雪丸の驚くべきドジが、なぜか周囲を巻き込んで、番組や局全体を盛り上げてしまうのだ。彼女を見つめる情報部部長の小倉(『水曜どうでしょう』のチーフディレクターとして知られる藤村忠寿)が、「バカはきっかけをくれる…」などとバカ枠の意義を解説するのも面白い。
芳根京子といえば、朝ドラ『ぺっぴんさん』でいろいろ苦労しつつもこども服メーカーを創立する女性を演じていた。以後、映画『散り椿』などにも出演していたが、印象としてはまじめでおとなしく、まつ毛に憂いを醸し出していたように思う。それがこの『チャンネルはそのまま!』ではどうだ。常にやる気満々で気持ちだけが先走り、思いに体が追い付かないので、なぜか鼻だけが前へ前へと進んでいるような妙な動きを見せて笑わせるのである。憂いまつ毛封印!これがよかった。
主演俳優の従来のイメージ、得意技を封印するのは勇気がいる。しかし、それが観る人を引っ張る。ふたつのドラマは、それを教えてくれた。