昭和女子大学理事長・総長の坂東眞理子さん(73才)が2019年春に出版した『70歳のたしなみ』がこの度20万部を突破。下は30代から上は90代まで老若男女を問わず、世代を超えてたくさんのかたから「元気が出た」「迷いが吹っ切れた」「この本に出会えてよかった」などなど共感の声が寄せられている。ベストセラー著者、坂東さんはどんな気持ちで新年を迎えたのか。坂東さんへの新春インタビューをお届けする。
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新年の目標というと、“今年こそ”と肩に力が入りがちですが、今年こそという考えは「去年はできなかった」という自責の念の裏返し。後ろ向きの発想で、等身大の目標としては達成のハードルが高くなってしまいます。気負わず、もっと肩の力を抜いていいんです。
かくいう私も、そうやってマインドセットを転換できるようになったのは60歳を過ぎてから。働きざかりの50代は上昇志向が強くて、いつも“もっと、もっと”と貪欲に生きていたため、内閣府を退官して自分が何をすればいいのか見失ってしまったんです。58歳で昭和女子大学の教授に就いた頃は、まだどうしたら自分が世のために貢献できるのかと、すごく迷っていました。
この迷いはおそらく、子供が巣立った時に多くの女性が抱える役割喪失と似ているのではないでしょうか。死ぬまで母親であることは変わらないけれど、ひとつのステージを終えた自分は次に何をすればいいんだろうか、と。その時に母親ほど生き甲斐のある仕事は何もないと抜け殻にならず、どんな小さなことでもいいから日常で“やったぞ”と達成感を得られる仕事を見つけて、自分を勇気付けてほしいです。
――2019年には、馬場あき子さんが主宰する短歌結社『かりん』に入ったという坂東さん。それが、ご自身にとっても「◎」な、いい出来事だったという。
仕事といっても難しく考える必要はありません。要はやるべきことや、やりたいこと。2019年は短歌結社に参加したことが私の◎だったと話しましたが、毎月必ず短歌を作らなくてはいけないというやるべきことが、私にとっては大きなチャレンジだったんです。正直、70を過ぎて新入生として結社に入門して、ピラミッドの底辺から始めるのはちょっとだけ躊躇もありましたよ(笑い)。
でもね、たまたま馬場さんとお目にかかる機会があったので“今さら”と尻込みしていた気持ちをエイヤッと捨てたんです。すると、毎月課題をクリアできた達成感は格別で新しい世界が開けた。歳を重ねたら、“今さら”“どうせ”は禁物だなと実感しました。趣味でも何でも生活に新たな張り合いを見つけられたら、とっても素敵だと思いませんか。