国内

「こたつ記事」を量産した旅行ライターが廃業を決意するまで

こたつに座ったまま動かなくても書ける「こたつ記事」

こたつに座ったまま動かなくても書ける「こたつ記事」

 テレビで見たこととネットで読んだことをまとめただけの“こたつ記事”は、調査も取材も自分でしない安易な記事の作り方として、地道に実績を積み上げているライターや編集者からは嫌われる行為だ。読者からも、人のコンテンツを勝手に利用するだけの行為は敬遠されている。その一方で、「誰も傷つかないからいいじゃないか」と、独自の理論で開き直る人たちもいる。こたつ記事作成に関わってしまったために、好きだった旅行が嫌いになってしまった元ライターの悲哀を、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
「私が書いているのはいわゆる“こたつ記事”。結局誰のためになっているのか……。わずかなギャラがもらえる私のためか、編集部に入る広告費のためか。私がいくら綺麗で、感動的な記事を書いたところで、読者は裏づけがない情報を読まされているのだから、やはり被害者なんですね」

 こう訴えるのは、元旅行ライターであるユメカさん(仮名・40代)。ユメカさんがいう“こたつ記事”とは、こたつに座ったままでも出来るテレビ視聴やネット検索で得られる、すでにメディアに出ている情報から作成されている記事のことだ。いわゆる“取材”はしない。テレビで放送された内容をまとめただけの記事も、動かずに作成できることから“こたつ記事”と呼ばれることもある。そして、他者が時間と費用をかけて作成した情報にただ乗りしていることから、批判や揶揄の意味をこめて“こたつ記事”と呼ばれることも多い。

 こたつ記事を書いていると自嘲するユメカさんは、もともと趣味の旅行に関する記事をブログに書き記していた。プロのライターや編集者としての経験はなかったが、ブログを書くのは楽しかった。そこに、都内の編集プロダクションから「依頼」のダイレクトメッセージが寄せられたのである。

「最初は、ブログに載せていた“東南アジアの観光地の写真”を使わせてくれないか、という依頼でした。出典とブログ記事へのリンクを貼ることを条件に許可をしたのですが、守られなくて……」

 謝罪もあり、二度目三度目の”依頼”も快諾していたが、やはり条件は守られずじまい。いい加減だなと呆れたが、それでも、自身の撮影した写真がプロの記事に使われることに喜びを感じていたことから、付き合いを続けた。「記事を書いてみませんか」、付き合いを続けていた編集プロダクションからそう言われたのは、五度目の写真使用の「依頼」を受けた時だった。

「一文字あたり1円で、一記事あたりの文字数は1500字が上限。写真は一記事あたり二枚以上など、細かい条件がありました。安いな、とも感じましたが私はライターとしての実績も何もない素人同然でしたから。ページビューに応じてギャラの増額があることも伝えられ、なんとなく納得。ブログがお金になるならと思ったんです」

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン