テレビで見たこととネットで読んだことをまとめただけの“こたつ記事”は、調査も取材も自分でしない安易な記事の作り方として、地道に実績を積み上げているライターや編集者からは嫌われる行為だ。読者からも、人のコンテンツを勝手に利用するだけの行為は敬遠されている。その一方で、「誰も傷つかないからいいじゃないか」と、独自の理論で開き直る人たちもいる。こたつ記事作成に関わってしまったために、好きだった旅行が嫌いになってしまった元ライターの悲哀を、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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「私が書いているのはいわゆる“こたつ記事”。結局誰のためになっているのか……。わずかなギャラがもらえる私のためか、編集部に入る広告費のためか。私がいくら綺麗で、感動的な記事を書いたところで、読者は裏づけがない情報を読まされているのだから、やはり被害者なんですね」
こう訴えるのは、元旅行ライターであるユメカさん(仮名・40代)。ユメカさんがいう“こたつ記事”とは、こたつに座ったままでも出来るテレビ視聴やネット検索で得られる、すでにメディアに出ている情報から作成されている記事のことだ。いわゆる“取材”はしない。テレビで放送された内容をまとめただけの記事も、動かずに作成できることから“こたつ記事”と呼ばれることもある。そして、他者が時間と費用をかけて作成した情報にただ乗りしていることから、批判や揶揄の意味をこめて“こたつ記事”と呼ばれることも多い。
こたつ記事を書いていると自嘲するユメカさんは、もともと趣味の旅行に関する記事をブログに書き記していた。プロのライターや編集者としての経験はなかったが、ブログを書くのは楽しかった。そこに、都内の編集プロダクションから「依頼」のダイレクトメッセージが寄せられたのである。
「最初は、ブログに載せていた“東南アジアの観光地の写真”を使わせてくれないか、という依頼でした。出典とブログ記事へのリンクを貼ることを条件に許可をしたのですが、守られなくて……」
謝罪もあり、二度目三度目の”依頼”も快諾していたが、やはり条件は守られずじまい。いい加減だなと呆れたが、それでも、自身の撮影した写真がプロの記事に使われることに喜びを感じていたことから、付き合いを続けた。「記事を書いてみませんか」、付き合いを続けていた編集プロダクションからそう言われたのは、五度目の写真使用の「依頼」を受けた時だった。
「一文字あたり1円で、一記事あたりの文字数は1500字が上限。写真は一記事あたり二枚以上など、細かい条件がありました。安いな、とも感じましたが私はライターとしての実績も何もない素人同然でしたから。ページビューに応じてギャラの増額があることも伝えられ、なんとなく納得。ブログがお金になるならと思ったんです」