2020年、長年にわたって日韓関係に暗い影を落としてきた慰安婦問題が、再び俎上に載りそうな気配だ。
慰安婦問題を巡っては2015年に両政府間で「最終的かつ不可逆的に解決する」とした日韓合意が結ばれた。が、日本大使館前に設置された慰安婦像は撤去されず、元慰安婦らを支援する「和解・癒やし財団」は韓国側に一方的に解散させられ、約束が守られないまま膠着状態に陥っている。
元慰安婦の女性らが、「日韓合意は日本政府への賠償請求を阻み、財産権を侵害するものであり、韓国の憲法に違反する」と訴えた裁判では、昨年12月27日、韓国の憲法裁判所が訴えを却下する判断を下した。『韓国「反日フェイク」の病理学』(小学館新書)の著書がある韓国出身の作家・崔碩栄氏は、この件が今後、日韓の大きな火種になっていくことを危惧している。
「第一報で訴えが却下されたと聞き、これで最悪の事態は避けられたと安堵したのですが、まったく違っていた。報道を精査すると、日韓合意は、書面の交換や国会の同意がないので効力が不明であり、被害者の権利が侵害されたとは言えないから、訴えを却下するという見解を憲法裁判所は示している。つまり、日韓合意を効力が不明として否定しているのです」
裁判では元慰安婦らが「日韓合意は違憲」だと訴え、それが却下されたのだから、憲法裁判所は「合憲と判断した」と勘違いした人は多いはずである。NHKでさえ、12月27日に「慰安婦問題の日韓合意は合憲 韓国憲法裁判所」というニュースを誤って流し、後に訂正したほどだ。