「試験監督のいびきが気になって集中できなかった」──2018年度センター試験中に数回いびきをかいた大阪大学の教授が、訓告処分を受けた。
試験監督を担当するのは教授や講師など試験会場となる大学の教員だ。彼らは単に試験用紙の配布や不正行為の監視をしているだけではない。ハードな任務の中身を知れば、居眠りにも同情したくなる。
試験監督の経験がある福山市立大学名誉教授の藤森かよこ氏は、「憂鬱の極みだった」と当時を振り返る。
「試験当日は朝8時の集合から夜6時半の解散まで、一切気を緩めることができません。試験時間を1分間違えても大問題になるので、電波時計を各部屋に2台持参。試験中は学生の邪魔にならないように、特定の受験生の後ろに長く立つとか、やたらと歩き回ってはいけません。かといって読書は禁止。試験中に声を出すと他の生徒の迷惑になるので質問には筆談で対応します」(以下、藤森氏)
藤森氏はかつて教員だった桃山学院大学と福山市立大学で、1996~2014年までの18年間にわたって試験監督を担当した。試験官には事前に厚さ約1センチのマニュアルが配られ、説明会への参加も求められたと話す。
「リスニング中に外で騒音が聞こえた場合の対応など、問題が起きた場合の対策が詳細に書かれています。マニュアルにない問題が起きたら、自己判断で対処せずに、大学入試センターに確認しなければいけません」
身なりや服装の注意も細かく定められているという。
「足音を立てないためにゴム底の靴を履き、音がするような時計や装飾品は禁止。マニュアルは年を重ねる毎にどんどん分厚くなっていき、試験監督をまとめる責任者用マニュアルは、もっとボリュームがありました」