新年早々、検察が菅義偉・官房長官の周辺に追い込みをかけるような動きを見せた。1月20日の通常国会召集を前に、東京地検特捜部はIR(カジノ)汚職事件で秋元司・元内閣府副大臣を再逮捕し、広島地検は公選法違反容疑で河井克行・前法相と妻の案里・参院議員の事務所に家宅捜索をかけた。安倍政権でカジノ解禁政策を強力に推進してきたのは菅氏だが、汚職批判でいまやカジノ解禁は風前の灯火だ。しかも、「史上初の夫婦議員同時逮捕か」と捜査の進展が注目されている河井夫妻もそろって菅氏の側近として知られる。
まさに菅包囲網である。苦境に立たされた菅氏は周囲にこんな韜晦(とうかい)的な言い方をしているという。
「これで私も総理候補とは呼ばれなくて済む。“総理にだけはならないでほしい”と言ってた女房は喜んでいるよ」
自分には“総理になりたいという野心はない”と強調してみせたのだ。菅氏が強く警戒していたのは、安倍晋三・首相が口にした後継者発言だった。
昨年12月29日、安倍首相はBSテレビ東京の番組『NIKKEI 日曜サロンSP』に登場し、ポスト安倍について岸田文雄・政調会長、茂木敏充・外相、加藤勝信・厚労相と並べて菅氏の名前を挙げた。首相が菅氏を後継首相候補の1人に名指ししたのは初めてだ。
「菅さんはその言葉を聞いてゾッとしたのではないか」と語るのは自民党ベテラン議員だ。