この総統選は、台湾のみならず東アジアの命運を握るものだった。香港で反政府デモの嵐が巻き起こるなか、台湾の民意は中国の介入に「NO」を突きつけた。実に投票率74.9%。自由と人権を守るための熱い戦いを、長く台湾情勢を取材し続けているジャーナリスト・門田隆将氏が報告する。
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1月11日午後9時。台北市中正区北平東路の民進党本部前に設えられたステージの前には、4年前の総統選に勝るとも劣らない数の群衆が詰めかけていた。 開票が進むにつれ、蔡英文の得票数が史上最多の800万票に迫っていた。立法院選も、民進党が過半数を超えることは確実になっていた。
当確が出る度に、大歓声が巻き起こる。異様な熱気の中、ステージの上でスタッフが勝利の雄叫びを上げていた。
「われわれ台湾人は自由を守り抜いた! 蔡英文は、ここ台湾が自由で民主の地であることを世界に示したんだ」
「ここには香港の人たちも沢山来てくれている。香港を取り戻せ! 時代の革命だ! 台湾はあなたたちを応援する!」
「私たちは投票によって香港のために声を上げた。それは私たち台湾のためでもある!」
民進党の緑の旗に交じって、「光復香港 時代革命」という旗が打ち振られていた。黒地に白い文字の香港デモ隊の旗だ。
ああ、香港からこんなに多くの若者が来てくれていたのか。喜びに満ちた彼らの表情を見て、私は胸が熱くなった。まさに彼らこそ、蔡英文勝利の立役者であり、「真の主役」だったからだ。