「24時間365日営業」を掲げる日本最大の医療法人・徳洲会を一代で築き上げ、政財界にも広くその人脈を築いた医学界の革命児・徳田虎雄氏(81)。難病で全身の自由を失ってなお、「目の動き」だけで部下に指示を飛ばし続けたこの人物は、病院経営を退いた今でも、院内では“神”に近い存在となっている。だが、そのカリスマ性ゆえに、彼の“意向”ひとつがグループ全体を揺るがす事態を呼んでしまう。過去幾度となく世間の耳目を集めてきた巨大医療法人で、再び「お家騒動」が起きていた。ジャーナリストの伊藤博敏氏がレポートする。
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〈平成から令和へと改元が行われ、日本は新しい時代を迎えたところですが、この度、徳洲会の自浄作用を問われる事態が起こってしまいました〉
こんな書き出しで始まるA4用紙4枚の文書がある。名義人は、徳田虎雄氏(81)。全国360の医療施設を持つ日本最大の医療法人・徳洲会の前理事長である。
1902文字に及ぶこの文書の作成日付は2019年12月7日。現在の徳洲会を憂慮し、「生命だけは平等」という原点に回帰、再スタートを切るべきだ、と訴えている。
虎雄氏といえば、一代で徳洲会グループを築き上げた「病院王」として知られる。医師として僻地医療に心血を注ぎ、医療改革の実現のため1990年に政界に進出し衆院議員に。しかし10数年前、全身の筋肉が徐々に衰えていく難病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患い、2005年に政界を引退した。以降、病状は悪化の一途を辿り、眼球を動かす筋肉だけを残して、体中の全ての自由を失った。
そんな状態でも虎雄氏が執念を燃やし続けたのが、病院経営だった。