日本人男性の罹患数第1位の胃がん。造影剤のバリウムを飲みほした後、全身を検査台に固定されてグルグル回転させられる胃部X線検査(バリウム検査)が定番だ。しかし、バリウム検査には、見落としではなく「検査自体が原因で死に至るケース」がある。
日本消化器がん検診学会の報告によれば、2014年度に実施されたバリウム検査のうち死亡例が2件ある。1件は88歳の男性が腸閉塞を起こしたことが、もう1件は大腸の一部に穴があく穿孔(せんこう)が原因だとされている。NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が指摘する。
「検査後にバリウムがきちんと排泄できなかった場合に起こりうる症状だ」
2015年5月には、バリウム検査を受けた50代の女性が、検査台が傾斜した際に台から転落。台と壁に頭を挟まれて死亡する事故が起きている。
また、バリウム検査は発見率も低い。厚労省の「地域保健・健康増進事業報告」(2016年度)によると、1年間で13万人発生する新規の胃がん患者のうち、自治体のバリウム検査で見つかるのはわずか4500人に過ぎない。
「バリウム検査で撮影する胃の画像は不鮮明で、がんの有無を判断するのは至難の業です。しかも肺がんX線の数十倍、あるいはそれ以上の被ばく量があったりと、検査自体のリスクも大きい」(上医師)
胃がん検査の選択肢としてバリウム検査しかないなら仕方ないが、より高い精度で調べる検査が存在する。内視鏡検査(胃カメラ)だ。
「胃カメラは画像診断の精度が高く、直接胃の組織を採取して病理検査を行なうこともできます」(上医師)