ライフ

【平山周吉氏書評】伝説女優・芦川いづみの至福の記録

『芦川いづみ 愁いを含んで、ほのかに甘く』高崎俊夫・朝倉史明・編

【書評】『芦川いづみ 愁いを含んで、ほのかに甘く』高崎俊夫・朝倉史明・編/文藝春秋/2700円+税
【評者】平山周吉(雑文家)

 旧作日本映画の上映館である東京神田の「神保町シアター」では、何度も「芦川いづみ特集」が行なわれている。ある時、上映の前に芦川本人の音声メッセージが流れた。六歳年下の藤竜也との結婚を機に完全引退してから半世紀以上、表舞台から消えた女優のやさしげで、落ち着いた声であった。「わたしは、おかげ様で毎日を元気に過ごしています。どうぞ皆様も、お元気で、お過ごしください」。

 え、まさか、というその時の驚きと、なんとも言えない至福感がそのまま一冊に詰まったようなデビュー65周年記念出版本である。当時のスチール、ポスター、雑誌のインタビュー記事だけでなく、本書の目玉は現在の芦川いづみ(というより本名の伊藤幸子さん)のロング・インタビューが収録されていることだ。

 川島雄三監督に見出されたSKD(松竹歌劇団)時代から、今も毎年一回集まる元日活の女優さんたちの交流までが語られるが、話題の中心は、出演作品である。自身が一番好きな「佳人」、聖少女役に挑み、台本のセリフを色分けした「硝子のジョニー 野獣のように見えて」、黒ぶち眼鏡の女史姿が似合っていた「あした晴れるか」、清純な女子大生の「あいつと私」……。藤竜也との結婚をサポートしてくれた石原裕次郎の思い出も。

「ほんとうに、わたしほど幸せな人間はいないなあと思いますね」。

関連記事

トピックス

広末涼子容疑者(写真は2023年12月)と事故現場
《広末涼子が逮捕》「グシャグシャの黒いジープが…」トラック追突事故の目撃者が証言した「緊迫の事故現場」、事故直後の不審な動き“立ったり座ったりはみ出しそうになったり”
NEWSポストセブン
北極域研究船の命名・進水式に出席した愛子さま(時事通信フォト)
「本番前のリハーサルで斧を手にして“重いですね”」愛子さまご公務の入念な下準備と器用な手さばき
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者(2023年12月撮影)
【広末涼子容疑者が追突事故】「フワーッと交差点に入る」関係者が語った“危なっかしい運転”《15年前にも「追突」の事故歴》
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
「全車線に破片が…」広末涼子逮捕の裏で起きていた新東名の異様な光景「3kmが40分の大渋滞」【パニック状態で傷害の現行犯】
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
広末涼子(時事通信フォト)
【広末涼子容疑者が逮捕、活動自粛発表】「とってもとっても大スキよ…」台湾フェスで歌声披露して喝采浴びたばかりなのに… 看護師女性に蹴り、傷害容疑
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン