毎年、多くの人が受ける健康診断。切り離せないのが「基準値」だ。そもそも健康診断における基準値は、各臨床学会のガイドラインなどをもとに厚労省が定めている。健診後に生活習慣病改善のための保健指導が必要となるレベルは「保健指導判定値」、重症化防止のための治療が必要となるレベルは「受診勧奨判定値」として示される。
例えば高血圧については、上の血圧(収縮期)が130mmHg以上なら保健指導の対象、140mmHg以上なら受診勧奨となる。
脂質異常症を引き起こすとされるコレステロール。現行の基準値では、LDL(悪玉)コレステロールが120mg/dl以上なら保健指導となり、140mg/dl以上なら受診勧奨となる。だが健康診断の数値に詳しい、東海大学名誉教授の大櫛陽一氏がこう語る。
「コレステロールは体に必須の物質でもあり、血管を丈夫にする働きがあります。日本ではLDLが120以上だと高いとされ140を超えると投薬治療が必要だとされてしまいますが、この基準は厳しすぎる。欧米では190以下が基準であり、私が日本でのデータを解析した結果からも200を超えなければ問題ないと考えています」
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出されるBMI(体格指数)は、25以上になると「内臓脂肪がたまっているリスクがある」として食生活の改善などを促される。だが近年の研究では、この基準を疑問視するものが少なくない。
北海道大学大学院などが約2万7000人の高齢者(65~79歳)を11年以上にわたって追跡調査したところ、BMI20~29.9の間で総死亡リスクに大きな差はなかった。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏の指摘。
「海外の調査では“太っているほうが痩せているより健康だ”との結果が複数存在します。中肉中背のほうががんになりにくく、BMI28程度の肥満傾向なら死亡率に関係しないとの結果も出ている。BMI25で線引きする日本の基準値は厳しすぎる印象です」