日本のビジネスの特徴の1つとしてあげられるのが、同族経営が多いこと。ファミリービジネスならではのメリットを生かして成功する企業は少なくないが、父が倒れて事業を承継することになった場合、注意すべき点を何なのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
会社員です。実家は漆の食器類を扱う問屋&店舗を経営しています。社長は父なのですが、先月倒れてしまい、母から店を継いでくれないかと頼まれました。いわゆる事業承継です。店は3人の社員と2人のパートさんがいます。私が引き継ぐ場合、どのような点に気をつけなければいけないでしょうか。
【回答】
この場合、会社の実態、相続、税金が重要です。まず、経営について決算書や資金繰り等を確かめ、お父さんから聞くだけでなく、会社の監査役や税理士さんからも、説明を受ける必要があります。
ただ、この時点でわかるのは現状だけ。従来の経営ぶりに加えて業界の将来性を踏まえ、先の見通しも大切。さらに十分な引き継ぎ期間がなく承継する場合、5人の従業員を束ねて経営するので、人的な情報把握も重要です。銀行の借入れがあれば、通常は社長が保証しています。経営を承継すれば、保証を求められる可能性大です。
次に、事業承継は株式の生前贈与や遺贈(贈与等といいます)という方法で行なわれるので、お父さんの遺産中、会社の株の割合が大きいと、お母さんや他の兄弟の遺留分を侵害する可能性が出てきますから、その調整も必要です。