国内

多重介護疲れ殺人事件 残酷な因習の果てに彼女は手をかけた…

現場となったのは長閑な集落にある家(写真/共同通信社)

 その女性は、地元の名家に嫁に来た。誰もが羨む結婚で、その時代の女性に「最期まで義親の面倒を見ること」は疑う余地もなかった。家族は「村いちばんの嫁」と自慢した。だが、日本の地方に残る美しくも残酷な家族の因習の果てに、ある夜、彼女は義父母と夫に手をかけた──『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)の著者でもあるジャーナリスト・高橋ユキ氏による渾身の現地ルポ。(敬称略)

 * * *
 福井地検は2月下旬まで、岸本政子容疑者(71才)に刑事責任能力を問えるかどうかの精神鑑定を行うという。

 あの夜、政子は自ら大量の睡眠薬をのんで自殺を図った。決して楽な死に方ではなく、のたうち回るような苦しい死の迎え方である。それでも、政子は瀕死の状態で見つかった時、すでに布団の中で冷たくなっていた夫の手を離すことなく、しっかりと握り続けていた。

 立派な日本家屋の2階の寝室。この家に嫁いで、何十年と「長男の嫁」として生きてきた。思いやりのある家族の中で、義父母を最期まで看取ることは、当然のことだと思っていた──。

 福井県敦賀市の北端にそびえる高速増殖原型炉「もんじゅ」。計画当初は“夢の原子炉”として期待されたが、ナトリウム漏れ事故などにより、2016年に廃炉が決定した。そこから南西に車で20分。畑と家屋が点在する長閑な集落の南端に、事件の舞台となった一軒家はある。

 庭の木々はきちんと整えられており、掃除も行きとどいている。玄関の引き戸には、誰が訪問したかがわかるようにという取り決めか、親族の名前が書かれたシールが何枚も貼られていた。突然に家主を失った家を、定期的に訪れて守っているのだろうか。

 昨年11月17日未明、その家の中から、太喜雄(当時70才)とその両親である芳雄(同93才)、志のぶ(同95才)が遺体で見つかった。死因はいずれも頸部圧迫による窒息死。同居していた太喜雄の妻、政子の犯行だった。

関連記事

トピックス

アメリカの実業家主催のパーティーに参加された三笠宮瑶子さま。写っている写真が物議を醸している(時事通信フォト)
【米実業家が「インスタ投稿」を削除】三笠宮瑶子さまに海外メーカーのサングラス“アンバサダー就任”騒動 宮内庁は「御就任されているとは承知していない」
NEWSポストセブン
11月に不倫が報じられ、役職停止となった国民民主党の玉木雄一郎代表、相手のタレントは小泉みゆき(左・時事通信フォト、右・ブログより)
《国民・玉木代表が役職停止処分》お相手の元グラドル・小泉みゆき「連絡は取れているんですが…」観光大使つとめる高松市が答えた“意外な現状”
NEWSポストセブン
10月末に行なわれたデモ。参加者は新撰組の衣装に扮し、横断幕を掲げた。巨大なデコトラックも動員
《男性向けサービスの特殊浴場店が暴力団にNO!》「無法地帯」茨城の歓楽街で「新撰組コスプレ暴排デモ」が行なわれた真相
NEWSポストセブン
秋田県ではクマの出没について注意喚起している(同県HPより)
「クマにお歌を教えてあげたよ」秋田県で人身被害が拡大…背景にあった獣と共存してきた山間集落の消滅
NEWSポストセブン
姜卓君被告(本人SNSより)。右は現在の靖国神社
《靖国神社にトイレの落書き》日本在住の中国人被告(29)は「処理水放出が許せなかった」と動機語るも…共犯者と「海鮮居酒屋で前夜祭」の“矛盾”
NEWSポストセブン
公選法違反で逮捕された田淵容疑者(左)。右は女性スタッフ
「猫耳のカチューシャはマストで」「ガンガンバズらせようよ」選挙法違反で逮捕の医師らが女性スタッフの前でノリノリで行なっていた“奇行”の数々 「クリニックの前に警察がいる」と慌てふためいて…【半ケツビラ配り】
NEWSポストセブン
「ホワイトハウス表敬訪問」問題で悩まされる大谷翔平(写真/AFLO)
大谷翔平を悩ます、優勝チームの「ホワイトハウス表敬訪問」問題 トランプ氏と対面となれば辞退する同僚が続出か 外交問題に発展する最悪シナリオも
女性セブン
2025年にはデビュー40周年を控える磯野貴理子
《1円玉の小銭持ち歩く磯野貴理子》24歳年下元夫と暮らした「愛の巣」に今もこだわる理由、還暦直前に超高級マンションのローンを完済「いまは仕事もマイペースで幸せです」
NEWSポストセブン
医療機関から出てくるNumber_iの平野紫耀と神宮寺勇太
《走り続けた再デビューの1年》Number_i、仕事の間隙を縫って3人揃って医療機関へメンテナンス 徹底した体調管理のもと大忙しの年末へ
女性セブン
白鵬(右)の引退試合にも登場した甥のムンフイデレ(時事通信フォト)
元横綱・白鵬の宮城野親方 弟子のいじめ問題での部屋閉鎖が長引き“期待の甥っ子”ら新弟子候補たちは入門できず宙ぶらりん状態
週刊ポスト
大谷(時事通信フォト)のシーズンを支え続けた真美子夫人(AFLO)
《真美子さんのサポートも》大谷翔平の新通訳候補に急浮上した“新たな日本人女性”の存在「子育て経験」「犬」「バスケ」の共通点
NEWSポストセブン
自身のInstagramで離婚を発表した菊川怜
《離婚で好感度ダウンは過去のこと》資産400億円実業家と離婚の菊川怜もバラエティーで脚光浴びるのは確実か ママタレが離婚後も活躍する条件は「経済力と学歴」 
NEWSポストセブン