どのような結論が出るか、世界中の関係者が固唾を呑んで見守っている。世界陸連が米スポーツ用品メーカー・ナイキの「厚底シューズ」の競技大会での使用を禁止する可能性があると英メディアが報じ、マラソン界には衝撃が走った。
「昨年秋に世界陸連は専門家による調査チームを立ち上げたといい、1月末には調査結果のレポートをまとめ、3月中旬の理事会で規制を設けるか結論を出すとみられている」(スポーツ紙記者)
ナイキの「厚底シューズ」とは同社が展開する『ヴェイパーフライ』シリーズを指す。トップ選手のシューズは軽さを追求した「薄底」というマラソン界の常識を覆した革命的なシリーズだ。
「ソール(靴底)に反発力のあるカーボンファイバープレートを入れ、それを航空宇宙産業で使う特殊素材で挟んでいるため『厚底』になっている。
シューズの爪先がせりあがっているので、重心を前へ傾けると前足部がググッと曲がり、カーボンファイバープレートがもとのかたちに戻ろうとする時に推進力が得られる構造です」(スポーツライター・酒井政人氏)
この「厚底」を履いたエリウド・キプチョゲ(ケニア)が、2016年リオ五輪の男子マラソンで金メダルを獲得。2017年に市販が始まると、毎年改良モデルが投入され、日本人選手でも設楽悠太や大迫傑がこのシューズを履いて相次いで日本記録を塗り替えた。正月の箱根駅伝でも、今年は大半の選手がナイキの「厚底」を使い、区間新ラッシュが起きている。
そんな“魔法の靴”が禁止となれば、影響は甚大である。