東京五輪開幕まで半年を切るタイミングで突如、浮上したナイキの“厚底”シューズ、『ヴェイパーフライ』シリーズの規制問題。新記録連発でマラソン界を席巻してきた“魔法の靴”が禁止となれば、影響は甚大である。
もちろん、売上高約4兆円を誇るナイキにとっても大問題のはずだ。
「特殊素材を使って“厚底でも軽量”を実現し、トップアスリートを集めて試作品や改良モデルのテストを重ねてきた。
イタリアのF1サーキットを貸し切ってフルマラソン2時間切りを目指すプロジェクト『ブレイキング2』などは、『ヴェイパーフライ』の宣伝効果を見込んだ部分も大きい。莫大なコストをかけて作り上げてきたシューズです」(スポーツ紙デスク)
それだけのコストをかけるだけの価値がある市場が存在するということでもある。ランニング関連商品の世界市場規模は他の競技を大きく上回る2.8兆円とされる。
市場調査会社「エヌピーディー・ジャパン」の調べによれば、日本国内のフットウェア市場規模は5390億円(2018年12月~2019年11月)で、そのうちランニングシューズ(中長距離陸上競技専用シューズを含む)の市場が1250億円と、全体の23.2%を占める。
今後、そうした1000億円単位の巨大市場を席巻できる可能性がナイキの厚底シューズにはあった。トップ選手が記録を出し続ける以上、市民ランナーが使いたいと思うのは当然のことだろう。
巨額の売り上げが見込める商品だけに、使用禁止となればナイキと当局の間での訴訟問題に発展する可能性があるのでは──国内外のメディアが既にそう報じている。