国際情報

EU離脱後のイギリス、枠組み交渉はどうなる 池上彰氏が解説

いよいよEU離脱が迫る(AFP=時事)

いよいよEU離脱が迫る(AFP=時事)

 1月22日、イギリス議会でEU離脱の関連法案が成立した。これを受け、イギリスは1月末、正式にEUを離脱することになる。では、その後のEUとの枠組み交渉はどう進展していくのだろうか。ジャーナリストの池上彰氏が展望する。

 * * *
 いよいよ1月31日の「イギリスEU離脱」が迫ってきました。この日、イギリスは形式的にはEUを離脱しますが、この日を境にこれまでの仕組みが一変するということではありません。イギリスは今後、EUと関税や移民問題、アイルランドとの国境問題など、さまざまな事柄を交渉していくのです。

 お互いの合意が得られ新しい枠組みへの移行を終了するその期間は、2020年12月31日までとされています。ただし、今年6月末の段階で申し入れをすれば、移行期間は延長できるのですが、ジョンソン首相は「移行期間は延長しない」と断言しています。難しい問題を一つひとつ詰めていくわけですから、ものすごく大変です。時間切れになる可能性はあるし、ジョンソン首相はとにかく急いでやれと発破をかけるでしょう。イギリスは2月以降、EUがどんな決定を下しても一切口を挟めなくなるわけです。果たして交渉はすんなりいくのでしょうか?

 私は、交渉は案外、順調にいくのではないかと見ています。イギリスはこれまで、もめにもめて3回も離脱延期をしてきました。ということはつまり、EU側も疲れているわけです。イギリスもEUも「離脱疲れ」があって早く決着したい、そういう思いがあって、意外に早く進むのではないかと考えられます。

 2016年、イギリスがEU離脱を決めて以降の道のりは平坦なものではありませんでした。2013年に当時のキャメロン首相が「次の選挙で保守党が単独過半数を得たら、EU残留の是非を国民投票にかける」と宣言した時は、ここまで混乱するとは思ってもいなかったでしょう。そもそも、国民投票で離脱決定の結果になるなんて、誰も思っていなかったのですから。

 住民の投票で国の行く末を決めるといえば、イギリスを構成する四つの国のひとつ、スコットランドで2014年に行われた「イギリスからの独立の是非を問う住民投票」があります。投票率が84.6%だったことからも、この問題に対する住民の関心の高さがうかがえます。「スコットランドは独立国家になるべきか」の設問に、賛成44.7%、反対55.3%で、独立は否決されました。

 しかし、イギリスの国民投票でEU離脱が決まってから、スコットランドでは再び独立の機運が高まっています。イギリスがバラバラになろうとする、そういうベクトルが動いているといえるでしょう。ただし、住民投票を行うにはイギリス政府の許可が必要です。現在のスコットランド自治政府のスタージョン首相は独立推進派で、イギリス政府に住民投票を行う権限を譲るよう要請しましたが、ジョンソン首相はこれを正式に拒否しました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン