上皇陛下が住まいである皇居内の吹上仙洞御所で一時意識を失って倒れられたのは、1月29日午後6時半ごろ。傍らにいた上皇后さまがすぐに非常ブザーを鳴らして侍医を呼んだことが報じられている。では、ご高齢の上皇上皇后両陛下の健康を支える医療体制はどうなっているのか。
皇室全体の健康全般を管理する統括責任者は、宮内庁の長官官房に属する「皇室医務主管」だ。ご病気の際の治療方法など、医療方針を決める際にも医務主管を中心に話し合われる。現在は、上皇陛下が2012年に東大病院で心臓手術をした際の主治医である永井良三・自治医科大学長が皇室医務主管を務める。
天皇ご一家、秋篠宮ご一家、上皇上皇后両陛下にはそれぞれ侍医がつき、24時間体制で勤務している。天皇ご一家は侍医長と侍医3人、秋篠宮ご一家は皇嗣職侍医長と皇嗣職侍医3人の体制がとられている。
上皇上皇后両陛下の日々の健康管理を受け持つのは、上皇侍医長と4人の上皇侍医からなる侍医団だ。皇室ジャーナリストの神田秀一氏が解説する。
「天皇在位中の侍医団がそのまま平行移動しており、医療体制は天皇のときとほとんど変わっていません。上皇侍医団はローテーションを組んで上皇さまのお住まいの近くに泊まり込み、24時間体制で勤務をしています」
昭和天皇の時代、侍医は毎朝、体温や脈を計測して「お東(便)」の状態まで調べていたが、現在の健康管理は簡素化されている。
「侍医は毎朝、上皇さまに『伺候(参上)』し、お顔の色を拝察して昨晩の睡眠状況などを問診します。風邪気味や疲れ気味の場合は熱や脈を取って、どこか具合が悪いところがないか確認します。
また、侍医は宮内庁大膳課の考案するメニューを健康や年齢などの観点からチェックし、栄養価などに関する指示を出すこともあります。実際につくられた食事を侍医が試食することもあります」(神田氏)
万一に備えて、上皇上皇后両陛下から離れないことも上皇侍医団の重要な役割だ。
「何かあればすぐに対応できるよう、上皇侍医は常に上皇さまと上皇后さまの近くにいます。今回のケースでも上皇后さまが最初に異変に気づき、緊急連絡網を使って上皇侍医の待機する部屋に連絡を取り、侍医が駆けつけたようです。
上皇上皇后両陛下が外出される時も上皇侍従、上皇侍医、皇宮警察の3人は必ずついています。侍医は室内で拝診するときはスーツにネクタイ姿が多いですが、上皇さまと上皇后さまが運動服を着用されて散歩される場合は、それに合わせた格好になります」(神田氏)